日経BP社 (2007/06/07)
売り上げランキング: 51

新たなパラダイムシフト−その時個人は
「ウィキ」と「エコノミクス」の造語が「ウィキノミクス」です。これまでWeb 2.0的なことによる変革は枝葉末節が書かれてきた感がありますが、本書は経済・経営に大胆に切り込んでいます。具体事例も豊富でケーススタディの中から、2.0的な考え方を取り込んだ企業がどのように成功したのかを学べます。是非読んでください。
ゴールドコープ・チャレンジの功績で最も長く影響力を持つのは、保守的で情報を隠したがる業界において活気的な探査法が機能すると確認できた点である。ロブ・マキューエンは業界慣行に逆らって企業財産であるデータを公開し、同時に、鈍重だった探査プロセスを、最高の才能が活用できる”分散型金発見エンジン”に変化させたのだ。
ref. p18
既に何百万人もの人々が自発的参加によるコラボレーションを行い、世界的な優良企業に匹敵する財やサービスをダイナミックに生み出している。これは「ピアプロダクション」やピアリングと呼ばれる形態で、無数の人と企業がオープンなコラボレーションを通じて業界に革新や成長をもたらすことを指す。
ref. p20
このような変化から、知識や能力、創造力が従来は考えられなかったほど分散された世界、価値の創造がすばやく流動的、かつ常に破壊的となる世界が生まれようとしている。他者とつながっている者だけが生き残れる世界だ。
ref. p22
スカイプの成長に限界など存在しないようだ。スカイプはルクセンブルグに本社をおく企業で、わずか2年でユーザ数が10万人から1億人に増え、2005年9月には、26億ドルでイーベイに買収された。米連邦通信委員会のマイケル・パウエル委員長(当時)は、初めてスカイプを使ったとき、こう語ったという。「ここまでだな。今後、世界が大きく変わることは避けられない」
ref. p45
産業のエレクトロニクス化など技術主導の変革は、従来、一世紀近くもの時間をかけて進行した。今回は革新に利用される資源がその範囲もりょうも増えているため、変化も早くなるはずだ。今はまだ経済的・組織的な変化が始まったばかりだが、既存勢力に時間的猶予はないと考えるべきだ。硬直的な「計画・実行」型の考え方は休息に古くなり、ダイナミックな「参加・協創」型経済が台頭しつつある。世界経済の競争激化によって企業が大きく変質するとともに、それに対応して政治や法制度も変化しようとしてる。
ref. p51
企業向けウィキソフトウェアを提供するソーシャルテキストの創業者、ロス・メイフィールドがよく言うように「新しいウェブとは動詞で表すもので、名刺じゃ表せない」のだ。
ref. p75
このように情報が錯綜する状況では、購買活動は、自分が知る(あるいは知っているように感じる)人の意見に強い影響を受ける。マイケル・ファーディックも、「我々の世代は、メディアや広告よりもピアツーピアで得た意見やソーシャルネットワークのほうを信じるのです」と指摘する。
ref. p84
ネット世代はそのハイテク親和性と創造性、社会的つながり、多様性によって他世代と一線を画している。労働者としてのネット世代は、「会社人間」が登場した1950年代以来というほどの大きな変化を職場や仕事のやり方にもたらす。
ref. p87
IBMのCEO、サム・パルミサーノも「世界の人材を活用するというのは、安い労働力への乗換えではなく、能力が目的なのだ」と説明する。
ref. p100
「ソフトウェアの世界では、これが特に重要な意味を持ちます。インフラストラクチャー内に非公開のソースコードがあると、他者に対する市場への参入障壁となる世界だからです。つまり、ソフトウェアの世界で資本主義を実現できるのはオープンソースだけなのです。オープンソースがなければ、独占の乱立となるだけです。いわば封建的経済にしかならないのです。」
ref. p149
ビジネスウィーク誌の記者、ロバート・ホフは、セカンドライフについて、「映画の『マトリックス』とソーシャル・ネットワーキングのマイスペース、オンライン市場のイーベイを一緒くたにしたようなもの」だと、鋭く表現した。
ref. p200
このように顧客による革新には豊かな歴史があるが、ユーザーやマニアのコミュニティにおける革新やアマチュアの創造性は枝葉末節な現象で、コア市場にとって価値もなければ心配する必要もほとんどないと考える企業が多い。
ref. p205
レゴインタラクティブ・エクスペリエンスのディレクター、マーク・ハンセンは、次のように語る。「レゴファクトリーにより、当社は、社内デザイナー100人という体制から脱却したのです。世界30万人以上のデザイナーによる創造性は目を見張るばかりです」。
ref. p210
ここにプロサンプションのジレンマがある。自由なハッキングを顧客に許せば、自社のビジネスもであるが侵食されたり、プラットフォームの管理体制が行えなくなるおそれがある。ユーザーと戦えば、評判を落とし、大きな価値を持つ核心の源を締め出すことになる。
ref. p217
ニュースを社会的なレクリエーションにする方法を見つけたのが、ディグを作った人たちだったからだ。
ref. p232
他者の仕事を観察し、そこから学び、検証できなければ、科学も商業も成立しない。データや素材、刊行物を効果的に手に入れられなければ、科学的事業など実現できない。しかし、最近の調査からは、危険な兆候が見て取れる。秘密主義の広がり、特許取得の圧力、やっかいな技術移転契約、ややこしいライセンス構造などにより、研究データの共有が難しくなりつつあるのだ。アメリカ科学振興協会が最近行った調査でも、学術研究者の35%が、データへアクセスできずに研究に支障をきたしたことがあると回答し、産業界の研究者は76%が同様の問題に遭遇したことがあると回答した。
ref. p286
フリーエージェントとして生きる個人が増えると、オープンプラットフォームはさらに重要性を増す。アガシがうまい表現をしてくれた。「自由電子の大半は、大きな重心に引かれるものです」。つまり、ダイナミックなプラットフォーム-相乗効果を生むビジネスをパートナーが始められる可能性が高いプラットフォーム-を持つ企業こそ、数え切れないフリーエージェントが提供する豊かな才能を手にできる可能性が高いのだ。
ref. p335